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M939 5tトラック : ウィキペディア日本語版
M939 5tトラック[えむ9395てぃーとらっく]

M939 5tトラックシリーズは、1980年代にアメリカ合衆国で開発・運用された、6×6輪駆動の5tトラックである。
== 概要 ==
M939 5tトラックシリーズは、1980年代に、M809 5tトラックシリーズをベースに開発された、6×6輪駆動の積載量5tクラスの軍用トラックである(オフロードで約5トン、舗装道路では10トン近くの積載量を持つ)。1980年に、M809を開発・生産していたAMゼネラル社によって開発されたXM939アメリカ軍に採用され、M939シリーズとなった。エンジンはM809と同じカミンズ社製NHC-250 14,000cc 6気筒ディーゼルエンジンであったが、変速機がオートマチックトランスミッションに変更され、操作性・燃費は大きく向上していた。また、中身のエンジンは同じであったが、それを覆うキャブ部分のデザインは大きく変更されていた。運転席部分は横に広がって3人乗りになり、ボンネットはフェンダーと一体化された形になり、全体が前方向に大きく倒れる事でエンジンの上面だけでなく側面も露出し、整備作業が容易になっている。ウィンチには安全停止装置が付き、ワイヤーが切れそうな程の荷重がかかると、回転を自動的に停止するようになり、破損や負傷の危険を軽減させていた。この他にも、ブレーキ寿命が約4倍に改良されたり、騒音レベルが大きく低減したり、といった多くの改良が施されていた。
また、M939シリーズには、同時期に開発されたEMS(Enhanced Mobility System, 機動力強化システム)の導入が計画されていた。これは、タイヤ空気圧の自動調整装置と、そのためのパイピングシステム、および14:00×R20の大径ラジアルタイヤの装着によって、運転席からタイヤの空気圧を変更し、路外機動性を向上させるという物であった(ラジアルタイヤ採用により、後輪はシングルタイヤに変更される)。この機能改良パックは、部隊配備されたM809シリーズに後付で装着されてテストが行われ、M939シリーズの改良モデルである、M939A2シリーズから標準装備される事になった。
最初に生産されたM939シリーズは、M54、M809シリーズと同様に、11.00×R20のタイヤを装着し、後輪はダブルタイヤであった。このモデルは1982年から量産が開始されており、最初期の生産車はM809として製造された車台から組み換えられた物であった。M939シリーズにもM54、M809シリーズと同様、3種類のホイールベースの車台が存在し、レッカー型やダンプ型などの派生型が開発されている。
また、前述の空気圧調整装置を装着せず、タイヤだけを14.00×R20の大径ラジアルタイヤ(後輪シングル)に変更したバージョンが、M939A1シリーズとして制式化され、輸出向け、およびアメリカ海兵隊向けに生産された。
1986年になると、M939シリーズの生産が、AMゼネラル社からBMY社に移管した。1989年には、エンジンを同じカミンズ社製で、ほぼ同等の出力でありながら重量が半分、耐用年数が1.3倍になった6CTA8.3 8300cc6気筒ターボチャージャー付きディーゼルエンジンに換装し、前述の空気圧調整システムと14.00×R20の大径ラジアルタイヤを装着、さらにキャブ内部のデザインを変更し、運転操作がHEMTTハンヴィーと同様になるよう改良された、M939A2シリーズの生産が始まり、アメリカ軍への導入が開始された。M939A2シリーズはBMY社により"ビッグフット"(Big Foot)のニックネームが付けられ、M939A1シリーズを導入していた海外ユーザーにも多数が売り込まれた。尚、M939A2で実装された空気圧調整システムは、前述のEMSという名称から、CTIS(Central Tire Inflation System)という名称に変更されている。
M939A1シリーズとA2シリーズの外見上の相違点(識別点)としては、
* A2にはCTISのパイピングのガード板(扇形の部品)が各ホイールに装着されている
* A2は車高が下がるため、デフの下側が削られて平らになっている。
* A2ではフロントバンパーの下側にもU字シャックルが装備されている。
などが挙げられる。
1991年に発生した湾岸戦争は、M939A2"ビッグフット"シリーズが実戦投入される最初の機会となった。これは、本車を開発したBMY社にとっては絶好の宣伝機会となり、初期量産契約の結ばれた24,000台のうち、開戦までに3,500両を完成させ、サンドカラーに塗装された新品のM939A2がアメリカ国内の工場から直接アラビア半島に送られた。湾岸戦争に動員されたアメリカ軍兵士の中には、アラビア半島に到着して初めてM939A2を見る者も少なくなかったが、操作感がHEMTTやハンヴィーとほぼ同じである事、CTISの操作は"舗装路"、"クロスカントリー"、"砂地"、などと書かれた中からレバーで選択するという非常にわかりやすい物であった事、さらに舗装路では時速100kmで走れる事などから、その評価は極めて好評なもので、本車を見たサウジアラビア軍が即座に4,000両の購入を決定したという逸話も残されている。
1990年代後半頃から、アメリカ軍では後継車種のFMTVの導入が始まったが、M939A2シリーズも引き続き運用されており、2003年のイラク戦争でも現地に派遣され、一部の車両はガントラックに改造されるなどして、前線で使用された。M939シリーズは総計で32,000台以上が生産され、2015年現在も各輸出先等で、現役で使用されている。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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